KIM&CHANG
Newsletter | July 2016, Issue 2
国際仲裁・訴訟
改正仲裁法の公布
2016529日に仲裁法改正法律が公布されました。今回の改正仲裁法は、UNCITRALモデル仲裁法(国際商事仲裁における統一的な法律解釈及び適用のために国連国際取引法委員会が作った仲裁モデル法規)の2006年の改定内容に合わせて、仲裁合意の書面要件を緩和し、仲裁判定部が下すことのできる臨時的処分の範囲を拡大するなど、紛争当事者が仲裁手続を通じて実質的に救済を受けられる道を大幅に拡大したという点に大きな意義があります。
今回の仲裁法改正により、韓国は全世界で米国フロリダ州、オーストラリア、香港、シンガポール等に続き、2006年のUNCITRALモデル仲裁法を受け入れた19番目の国として、仲裁制度をより身近なものとする代表国になりました。主な改正内容は下記のとおりです。
1) 仲裁合意の書面性の緩和
既存の仲裁法は、当事者らが署名した文書、手紙、電報、ファックスまたは通信手段によって交換された文書に仲裁合意が含まれていなければ有効な合意として認めていませんでしたが、改正仲裁法では、「口頭や行為、その他いかなる手段によって行われたかに関係なく、仲裁合意の内容が記録されている場合」にも有効な合意があるものと認め、「電子的意思表示」も含まれるものと明示しました。
これにより、当事者らが口頭またはいかなる方法で仲裁合意をした場合でも、その内容が記録(例えば、録音ファイルまたは会議録)によって立証される限り、有効な仲裁合意として認められるようになりました。
2) 仲裁判定部の臨時的処分の範囲拡大
既存の仲裁法は、仲裁判定部が紛争の「対象」に関して必要であると認める臨時的処分を下すことができると定めているだけで、その執行方法も定めていませんでした。
しかし、改正仲裁法では、仲裁判定部が「現状の維持または復元」、「仲裁手続そのものに現存する、または急迫した危険等の防止措置」、「進行対象となる資産の保全」、「紛争解決に関連性のある重要証拠の保全」の履行を命じることができると定め、仲裁判定部の臨時的処分は裁判所の許可を得て執行できることを明示しました。
これにより、韓国企業において、発注先との間で契約紛争が発生し、発注先がいわゆるボンドコール(Bond Call)をした場合、これまでは裁判所にこれに対する仮処分を申請しなければなりませんでしたが、今後は韓国の仲裁法によりすぐに仲裁判定部に臨時的処分を申請できる道が開かれました。
3) 仲裁適格、仲裁判定部の証拠調査権限の拡大及び仲裁判定の執行要件の緩和
改正仲裁法では、これまで私法上の紛争に限定していた仲裁適格を、財産権の紛争及び当事者が処分できる非財産権の紛争に拡大し、公法上の紛争も仲裁手続によって解決できるようにしました。
また、改正仲裁法は、仲裁判定部が裁判所に証拠調査の「協力」を要請すれば、裁判所が証人に仲裁判定部の前に出席したり、必要な文書を提出するよう直接命じることもできるようにし、仲裁判定部の証拠調査が実効性を備えられるようにしました。
その他に、仲裁判定の執行のために、従前は必ず弁論を経て裁判所の判決を受けるようにしていたものを、弁論なしに裁判所の決定だけで速やかに執行できるようにするなど、その要件を緩和したことも主な改正内容の一つです。
上記のように、今回の改正仲裁法は、仲裁の申請、臨時処分、審理の進行、執行の全ての面において迅速かつ効果的な手続を可能にすることによって、韓国が国際仲裁の中心地に発展するための制度的な足場を築いたものと評価することができ、韓国の仲裁制度を利用する全ての企業がその受恵者になると思われます。
今後、海外取引で紛争が発生した場合、即刻かつ幅広い救済のために仲裁手続を活用できる可能性が高まったため、迅速かつ効果的な対応が必要な場合は国際仲裁の専門家から助言を受けるのが望ましいといえます。
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