KIM&CHANG
Newsletter | July 2017, Issue 2
知的財産権
医薬特許権の存続期間延長登録に伴う延長期間に対するジェネリック社の無効主張を排斥した特許法院判決
特許法院は2017316日、医薬特許権に対する特許権存続期間の延長登録に伴う延長期間の有効性に対するジェネリック社の無効主張を排斥し、特許庁で延長した存続期間が適法だという判決を下しました(特許法院2017316日言渡201621201645(併合)判決、特許法院2017316日言渡2016449820164504(併合)、20164511(併合)、20165620(併合)判決)。

特許法第89条第1項は、特許発明を実施するために他の法令に基づいて許可を受けたり登録等をしなければならず、その許可又は登録等のために必要な有効性・安全性等の試験によって長期間を要する発明である場合には、その実施できなかった期間に対して特許権の存続期間を延長することができると規定しています。また、特許法第89条第2項は、特許権者に責任ある事由により必要とされた期間は上記の実施できなかった期間に含まれないと規定しています。

このような存続期間の延長登録に関連して、ここ2年間、ジェネリック社らは特許庁が延長した存続期間が無効であるという趣旨の数多くの特許権存続期間の延長登録無効審判を提起しています。特許法院はこのようなジェネリック社の無効主張が特許庁の実務に及ぼす潜在的な影響を考慮して、特許法院長を含む特別裁判部を構成してジェネリック社らが最も頻繁に提起している主張が含まれた代表的な2件の事件を審理しました。

特許法院は上記の判決で、次のような点を延長期間の有効性判断の法理として強調しました。
1) 特許法第89条の「発明を実施できなかった期間」の始期は、「薬事法等による許可等を受けるのに必要な有効性・安全性等の試験を開始した日又は特許権の設定登録日のうち遅い日」となり、終期は「許可等の処分がその申請人に到達することによって処分の効力が発生した日」である。
2) 「責任ある事由により必要とされた期間」とは、特許権者等の帰責事由が認められ、さらにはそのような事由と許可等の遅延の間に相当の因果関係が認められる期間を意味する。
上記の判決で特許法院は、特許庁の現在の実務によって延長された存続期間の有効性を認めながらも、次の通り現在の特許庁実務と一部相違した基準を提示したものとみられます。
特許法院 特許庁
存続期間の
延長登録期間
=全体の遅延期間-特許権者による遅延期間 =国内臨床期間+食品医薬品安全処の許可書類検討期間-特許権者による遅延期間
このような特許法院判決によれば、もし特許権者が許可等の過程で要請された書類の補完が特許権者の帰責事由によるものではないということを立証したり、帰責事由があるとしても許可の遅延とは相当因果関係がないことを立証するならば、当該補完期間も特許権存続期間の延長期間に含まれる可能性があるものとみられます。

また、特許法院は許可等に必要な試験を国内臨床試験だけに限定しなかったので、その他の試験に必要とされた期間(例えば、特許権設定登録以降に行われた試験で、食品医薬品安全処で許可等のために検討した外国臨床試験に必要とされた期間)も延長期間に含まれる可能性があるものとみられます。

但し、延長期間を限定的に認めようとする傾向がある特許庁としては、特許法院が延長期間の基本原則だけを提示しただけだと評価しており、外国臨床試験期間等が延長期間に含まれると明示的に判断したものではないので、これに必要とされた期間は依然として延長期間に該当しないとする可能性があります。したがって、このような具体的な事項に対しては特許法院の後続判決を通じた追加のガイドラインの提示が必要であると思われます。

上記の事件で弊事務所は特許権者を代理して本件を勝訴に導きました。
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