KIM&CHANG
Newsletter | July 2017, Issue 2
人事・労務
文在寅大統領の労働政策方向
文在寅大統領は、「労働尊重」を新政府の核心的な国政基調として、新政府が「経済成長論理で労働者に犠牲を強いず、労働が尊重される国を作ること」を何度も公言してきました。
文在寅大統領が率いる新政府の労働改革の方向性は、文在寅大統領の「OECD国家のうち5番目に非正規職が高く、労組組織率が4番目に低く、3番目に労働時間が長く、男女間の賃金格差が最も大きく、労災で命を落とす人が最も多い国」という発言と共に明らかにした労働政策に縮約されています。
文在寅大統領は「労働が尊重される国」のための4つの政策として、(1)働く人が主体となる社会、(2)働く人が貧困の心配をしなくてよい社会、(3)非正規職の縮小及び差別解消、(4)職場で命を落とす人のいない社会を提示しました。
1. 「働く人が主体となる社会」の公約のうち注目すべき事項として、労組加入率を10%台に引き上げ、労組未加入の勤労者を支援するべく、非正規職・特殊雇用労働者など一定期間雇用保険の納付実績がある勤労者のために、労組に代わる「韓国型労働会議所」の設立を推進する方針を明らかにしました。
2. 「働く人が貧困を心配しなくてよい社会」の公約には、2020年までに最低賃金を1万ウォンに引き上げ、フランチャイズ加盟契約と下請契約に最低賃金保障制度導入、未払賃金の消滅時効を現行の3年から5年に延長という内容が含まれています。
3. 労働市場の両極化問題解決に向けた新政府の核心政策になると予想される「非正規職の縮小及び差別解消」には、非正規職の量産を遮断するための「使用事由制限制度」の導入、「非正規職差別禁止特別法」の制定による「同一価値労働・同一賃金の原則」適用、非正規職を多く使用する大企業に対する「非正規職雇用負担金制」の導入、請負と派遣基準の策定による不法派遣の根絶等の内容が含まれています。
4. 「職場で命を落とす人のいない社会」に関しては、「危険の外注化防止法」の制定、労災隠蔽事業場に対する厳罰、発注事業主の請負人勤労者に対する安全保健責任の拡大、「物質安全保健資料公開審議委員会」を通じた勤労者の健康権及び知る権利の保護等の内容を含んでいます。
その他、法改正案が国会にかけられている勤労時間週52時間制のほか、任期内に年間労働時間1,800時間台の実現、勤労時間特例業種・除外業種の大幅縮小を公約し、勤労監督及び勤労監督官の実質捜査権の強化を強調しています。また前政府が推進していた成果年俸制を廃止し、中小企業の勤労者の賃金を大企業勤労者の80%程度にまで引き上げる「公正賃金制」など賃金体系の改善方案も提示しています。
このように、文在寅大統領の公約が他の分野より労働分野に優先順位をおいており、「労働者の尊厳と労働の価値」、「働くことが幸せな国」を核心基調としているだけに、大統領任期中、国民の生活に密接な雇用問題の解決を強調し、これにかみあった公約を優先的に推進すると予想されます。このような労働政策の実行過程においては、幾分、企業の経営環境の変化や労働コストの増加、政策実行の財源調達のための法人税率引き上げや非課税減免の縮小など税制強化を伴う可能性があると予想されます。
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