KIM&CHANG
Newsletter | July 2017, Issue 2
人事・労務
デパートの委託販売員の勤労者性を認めた大法院判決のご紹介
大法院は最近、デパートに入店した業者と販売役務契約を締結し、売上実績に応じて手数料を受け取るデパート販売員は勤労基準法上勤労者に該当するという判決を言い渡しました(大法院2017125日言渡201559146判決)。
本事案において、デパート入店業者である被告は、デパート販売員である原告らと販売役務契約を締結し、売上実績に応じて手数料を払ってきましたが、大法院は、たとえ契約が委任契約の形式になっていても、その実質は賃金を目的に従属的な関係で被告に労働を提供した勤労契約関係であると判断しました。大法院は、(1)手数料の上限が決まっており、売上が不振でも一定水準の報酬を受け取った点、(2)本社職員が周期的に販売員の勤務状況を点検した点、(3)被告が内部の電算網を通じてデパート販売員に業務指示をし、勤怠を管理した点、(4)被告はデパート販売員の「疾病休暇及び出産休暇現況表」も作成して保管していた点等の事情をその判断の根拠として提示しました。
勤労契約関係の判断において核心的な基準となる業務遂行過程での使用者の指揮、監督の内容及び程度は事業場ごとに異なりますが、デパート、総合スーパー等の販売員の場合、勤労契約ではなく委託・役務・請負契約を締結して業務を遂行することが多い状況のなか、今回の判決が及ぼす影響は大きいものとみられます。なお上記大法院判決では、原告が当初勤労契約を締結した状態で販売業務を遂行しており、退職処理後、販売役務契約を締結したものの、販売役務契約の締結前と後とで原告が遂行する業務内容や方式、被告の業務関与方式や程度等に変化がなかったという事情を勤労者性認定の主な判断根拠のひとつとみたことに照らし、今回の判決だけを根拠に今後裁判所がすべての委託販売員の勤労者性を認めると断定することは難しいです。
また、今回の判決は、最近大法院が債権取立人、浄水器の設置技師及びカードローン募集テレマーケター等に対しては勤労者性を認めながらも、ヤクルト販売員に対しては勤労者性を否定するなど、職群別に委任契約職の勤労者性に関する判断を異にしている中で出された判決であるという点で、今後、他の職群の委任契約職に対する勤労者性認定の可能性を判断するにあたっても参考にできるものとみられます。
最近の勤労者の範囲を広く認めようとする裁判所の傾向及び委任契約職に対する法的保護を強化しようとする政界の動き等を考慮したとき、大法院判決が提示した勤労者性判断基準等をもとに既存の委任職が勤労者として認められる余地があるかを点検し、既存の委任職の業務遂行形態を合理的に調整する等の方法を通じて、委任職の勤労者性認定の法的リスクに備える必要があります。
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