KIM&CHANG
IP Newsletter/ May 2019
韓国の知識財産権出願及び特許取消申請の現況
弁理士 金鎮伯
2018年の知識財産権出願現況
韓国特許庁の発表によると、2018年の特許、実用新案、デザイン、商標など知識財産権の出願は、前年比4.9%増加した合計480,245件で、史上最高値を更新した。
権利別に見ると、特許出願は前年比2.5%増加し、特に商標出願が9.5%と前年に比べ大幅に増加し、知識財産権出願史上、最高値を牽引したと見られる。
特許関連の出願人の類型別では、2015年以降、中小企業(22.8%)が最も高い占有率を占めており、続いて外国企業(22.0%)、個人(19.8%)、大企業(16.4%)、大学・公共研究機関(12.9%)などの順。2014年から減少し続けていた大企業の特許出願件数が前年比で3.6%増加した。
韓国企業のうちでは特にLG電子、LG化学の特許出願がそれぞれ前年比33.8%、14.7%増加した。一方、LGディスプレイは前年比で20.7%減少したのに反し、サムスンディスプレイは前年比で51.4%も増加した。
外国企業の場合、上位出願人10社のうち日本企業が6社を占め、前年に比べ特許出願も増加したところが多かった。また、半導体及び半導体装置関連の外国企業の出願の割合が大きいことも分かる。
国際特許分類(IPC)による技術分野別の出願現況を見ると、電気機械/エネルギー分野(7.3%)、コンピュータ技術(5.4%)、運送(5.2%)、半導体(4.9%)、土木工学(4.8%)の順である。このうち、電気機械/エネルギー分野は2015年以降、多少減少傾向にあったが、土木工学及びデジタル通信分野の出願が毎年増加し、2014年に比べ各々33.7%、24.8%増加したことが分かる。
特許取消申請制度の状況
20173月から施行された特許取消申請制度が導入されて、2年が過ぎた。特許庁では特許取消申請制度の運用状況を発表したが、具体的に見ると以下の通り。
(1.参考までに、当所で代理している特許取消申請事件の場合、現在まで代理件数は85件である。 このうち、特許権者代理件数が77件で、特許維持に成功した割合は86.5%に達する。)
20193月末基準で、全体申請件数のうち41%に該当する117件が処理され、平均所要期間は約9.4ヶ月要した。
処理件数の具体的な内訳は次の通り。
現在まで処理された117件中31件が認容され、認容率(特許取消率)は26.4%である。
これは無効審判の2018年認容率(46.3%)と比べてみると取消申請の認容率は相対的に低くはあるが、新規性・進歩性の違反、または、先願・拡大先願の違反の制限された理由に対してのみ特許取消申請が可能であるという点、申請人の積極的な介入が制限される取消申請制度の特異な点を考慮する必要がある。
一方、117件の処理件数のうち審判部から特許権者に取消意見提出通知が出された件は53件で、同通知があった場合には58.5%の認容率(特許取消率)が見られた。従って、取消意見提出通知があった場合に特許権者は訂正請求と技術説明会を通した対応が実務的に重要だと言える。
特許取消申請の場合、申請人の利害関係を必要としないため、約90%の申請人が個人名義で取消申請をした。一方、被申請人である特許権者は外国企業が約60%を占め、外国企業特許に対する取消申請が活発だという点が特徴である。
また、技術分野別では、化学分野が60%、電気・電子分野が19%、機械分野が9%、複合技術分野が9%を占め、特に外国企業の特許が多い化学分野で最も多くの取消申請がなされた。
特許取消申請制度の手続き上の留意点
特許取消申請件は通常、書面審理を基礎にするが、特許権者と申請人共に審判部に技術説明会の開催を要請することができるという点に留意しなければならない。実際に多くの事件で技術説明会が行われ、特許取消申請は特許権者と特許審判院の間の一方的な手続きであるのにもかかわらず、両当事者共に出席して技術説明会が行われた事例もある。
従って、技術説明会を活用して申請人の立場からは特許取消申請書の提出後、審判部にその内容を説明したり、特許権者の立場からは取消意見提出通知に対する意見書及び訂正請求書の提出前または提出後に審判官に特許性を釈明することが事件を成功裏に導くのに重要だと言える。
また、審判部との面談が実施された場合、これを基に特許権者は追加書面の提出が可能で、申請人が追加書面の提出を要請して受け入れられた事例もある。
なお、特許取消申請に対する認容決定が下された場合、韓国特許法上、取消申請に対する特許審判院の決定が確定するまでは別途の訂正審判を請求することはできない。従って、取消申請に対して特許審判院の認容決定後、特許法院に従わない場合、訂正審判を追加で提起できないので、取消意見提出通知への対応時、訂正請求が事実上最後の機会であるため、訂正請求前に十分な考慮が必要がある。
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