KIM&CHANG
Newsletter | March 2016, Issue 1
知的財産権
特許無効確定前にライセンス契約の解約が認められた事例
最近、ソウル高等法院は国策研究機関であるAT社を相手取って提起した約80億ウォン相当の船舶平衡水に関する技術料支払請求事件の控訴審で、事実上Aに対する敗訴判決を言い渡しました(ソウル高等法院20151119日言渡201454993判決)。
T社はAが特許出願中であった船舶平衡水電解消毒装置に関する技術に対し、Aと専用実施契約を締結して2025年までに電解モジュール(船舶平衡水電解消毒装置の部品)の製造・販売から発生する売上高の3%を技術料として支払うことにしました。ところが、Aは「電解モジュールのみを対象とする取引は行われないとの理由で、船舶平衡水電解消毒装置全体の売上高のうち電解モジュールが占める金額ではなく電解消毒装置全体の売上高を基準に3%の技術料を支払わなければならない」と要求して、T社を相手取って控訴審弁論終結時までに算定した約80億ウォン相当の技術料の支払を請求しました。Aの要求通りであれば、T社は80億ウォン以外にも今後契約が終了する2025年まで数百億ウォンの技術料を負担しなければならない状況でした。
T社は、まず専用実施権登録を放棄した後、Aの特許は進歩性がなく無効で、誰でも実施できる自由技術という理由を挙げて特許無効審判を請求し、特許審判院及び特許法院はAの特許が無効であると判断しました。
しかし、AAとT社間の契約が特許権に対する専用実施権設定契約ではなく契約文言と異なりノウハウの移転を主な目的とする契約であると主張して、契約書の作成当時に関与したA側の担当者を証人として出し、ノウハウを移転したという膨大な資料を提出しました。これにより、第1審裁判所はAの主張を全て認めて「特許が無効になったとしても、2025年まで船舶平衡水電解消毒装置の売上高全体の3%を技術料として支払え」という判決を下しました。これに対してT社は、控訴して「特許権に関する専用実施権を設定することが専用実施契約の真なる目的で、技術料を電解モジュールの製造・販売により発生した売上高の3%に限定する合意が存在した」という点を主張しました。
ソウル高等法院はT社の主張を受け入れて「AT社に特許専用実施権を設定して、これに直接関連した技術資料を提供するのが契約の核心的な内容であり、技術料は電解モジュールのみの売上高の3%で合意されたもので、原価算定等資料を参考にすれば、電解モジュールの売上高が占める比率はT社売上高の約20%である」と判示しました。
一方、T社はAの特許に対して無効審判を提起する前に、Aの特許が無効であることが明白であると判断してAに専用実施契約解約通知をしました。ところが、訴訟進行中に大法院で「特許が無効と確定されても、無効が確定したその時から特許実施契約が履行不能状態に陥ることになるとみなければならない」という判決が言い渡されたことにより、本件においてT社がいつまでの技術料を支払わなければならないかが争点となりました。これに対してソウル高等法院は、特許無効が確定する前であっても契約解約の事由(特許が無効になるのが明白になることで契約に著しい事情変更が発生した場合)が存在すれば、これを通知した時点まで契約有効が認められて解約通知前に発生した技術料のみを支払えばよいと判断し、このような判断によりT社がAに専用実施契約解約を通知する前に発生した約8億ウォンに対してのみ実施料の支払義務があると判示しました。
本件で当事務所は、T社を代理して勝訴判決を引き出しました。
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