KIM&CHANG
Newsletter | March 2016, Issue 1
訴訟
カジノ利用者の財産上損失による損害賠償請求の防御
大法院は最近、カジノ事業者にはカジノ利用者がゲームにより過度な財産上損失を被らないように保護すべき義務はないという趣旨の全員合議体判決を言い渡しました。
江原ランドカジノの会員営業所に出入りしていた利用者が、自分の金でゲームをするのではなく、他人のためにその人の金でベッティングのみを代行する、いわゆる「兵丁」を利用して、ベッティング限度額制限規定に違反してゲームをし、江原ランドの職員がこれを知っていながらも制止せず、むしろゲームをそそのかす違法行為をして、36ヶ月の間に約293億ウォンを失ったと主張して江原ランドを相手取って損害賠償を請求しました。
これに対して大法院は、個人は自身の自由な選択と決定により行為し、それによる結果を他人に帰属させたり転嫁せずに、自らこれを甘受しなければならないという「自己責任の原則」は、カジノ事業者と利用者間のカジノ利用に関する法律関係においても当然適用されなければならないと判断しました。大法院はこのような法理を適用して、カジノ事業者がカジノ運営にあたり公益上包括的な営業規制を受けていても、関連法令に明確な根拠がない限り、カジノ事業者にカジノ利用者の利益を自身の利益より優先したり、カジノ利用者がカジノゲームにより過度な財産上損失を被らないよう保護する義務はないので、江原ランド所属の職員がベッティング限度額の制限規定に違反したとしても、カジノ利用者に対する保護義務に違反して不法行為が成立するとはいえないという理由で、カジノ利用者の請求を棄却する判断をしました。
当事務所は、米国、オーストラリア、ヨーロッパ等の海外事例と法令及びカジノゲームの実際の運営の事実関係を綿密に分析して「自己責任の原則」という新しい法理を組み立て、激しい法理争いの末、今回の大法院全員合議体勝訴判決を引き出しました。
上記の大法院全員合議体判決は、自身の利益のために自ら選択した決定による責任は他人に転嫁できず、選択と決定をした自分で負うべきという私法秩序の根幹である私的自治の原則を明確に確認したという点で大きな意味があります。
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