KIM&CHANG
Newsletter | July 2016, Issue 2
訴訟
通常賃金訴訟における信義則抗弁の適用事例
釜山高等法院は、最近通常賃金請求事件で会社による信義則抗弁を受け入れ、原告ら(勤労者ら)の請求を全て棄却する判決を言い渡しました。
1審裁判所は、賞与金が通常賃金に該当すると判断して会社の信義則抗弁を排斥しました。特に、会社が主張した信義則抗弁に対して、(1)追加支出額が総人件費に占める比率が低い点、(2)会社の事業規模と収益率などに照らしてみるとき、会社に支給する余力がないといえない点、(3)会社が勤労者らに激励金や成果金を支給してきた点、(4)会社が2012年まで相当な当期純利益をあげてきたので、2014年の赤字にもかかわらず財務状態が非常に悪化しているとみられない点などを根拠に、会社が賞与金を通常賃金に含めて法定手当の未支給分を追加支給するからといって会社に「重大な経営上の困難をもたらしたり、被告会社の存立を危ぶませるとみるのは難しい」と判断しました。
しかし、釜山高等法院控訴審裁判部は、(1)賞与金が通常賃金に含まれる場合、労使合意で定めた通常賃金の金額より約60%増加し、(2)追加の法定手当を支給する場合、労使が既存に合意した賃金引上げ率をはるかに超えるとみられる点を根拠に、原告らの請求が労使が合意した賃金水準をはるかに超えると判断しました。特に、裁判部は、(1) 2014年以降、会社の営業損失が大幅に増加しており、(2)年度別追加負担額が会社の年度別当期純利益に占める比率が相当であり、(3)最近の造船業の深刻な不況により、会社の純借入金比率及び負債比率などが悪化しており、(4)会社の信用格付が最近下方調整されつつある点などを考慮しました。したがって、裁判部は、賞与金が通常賃金に含まれる場合、被告会社が負担しなければならない予想外の費用が発生するため、原告らの請求を認容すれば、会社に予期せぬ新たな財政的負担を負わせ、重大な経営上の困難がもたらされるとみられるため、原告らの請求が信義則に反すると判断しました。
当事務所は被告人会社側を代理して、会社の経営状態を産業環境的側面、会社の収益構造的側面、会社の財務構造的側面から分析し、賞与金が通常賃金に含まれる場合の実質賃金の上昇、負債比率の増加、事業投資の機会喪失、雇用増加の機会喪失など、様々な側面での効果を強調して勝訴判決を導き出しました。釜山高等法院の上記のような判断は、既存の大法院全員合議体判決の信義則抗弁に関する判断を具体的に適用した重要な事例と判断することができ、今後、各級の裁判所に係属中である通常賃金訴訟にも相当な影響を及ぼすものと予想されます。
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