KIM&CHANG
Newsletter | November 2016, Issue 3
知的財産権
不正競争防止法第2条第1号(コ)の適用範囲を明確に説示したソウル高等法院判決
ソウル高等法院は2016128日、最高級ブランド品であるエルメスのバーキン、ケリーのデザインをポリエステル素材の布地に印刷する方法で錯視効果を起こさせ、立体的に見えるようにした偽バッグである、いわゆる「プリントバック」を生産・販売する行為は不正競争防止法第2条第1号(コ)に違反する不正競争行為であるという判決を下しました(ソウル高等法院2016128日言渡20152012671判決)。裁判所は上記判決において、2013730日に新設された不正競争防止法第2条第1号(コ)の適用範囲を明確に説示しました。
原告エルメスのバーキン、ケリーは、普通1,000万ウォン台から1億ウォンの値がつく最高級のブランドンバッグで、少量のみ生産されるため、購入するためには待機者リストに名前を載せて13年待たなければならない製品です。被告は、原告製品の形態を撮影した後、これをポリエステル素材の布地に立体(3D)フォトプリント(photo-printing)技法で印刷する方法で「プリントバック」製品を生産し、デパート、免税店、インターネット・ショッピングモール等で販売し、これに対し原告が被告を相手取って不正競争行為の差止及び損害賠償請求訴訟を提起しました。
原告製品
(バーキン)
被告製品
(バーキンをプリントした形態)
前面部の形態 畳んだ形態
裁判所は、被告がプリントバックを生産・販売する行為は、原告が相当な労力と投資によって構築した成果物であるバーキンまたはケリーの形態を不当に利用するもので、不正競争防止法第2条第1号(コ)の不正競争行為に当たるという原告主張を認め、被告に対してプリントバック製品の製造/販売差止、廃棄及び15,000万ウォン(財産上の損害1億ウォン+名声・信用毀損による無形的損害5,000万ウォン)の損害賠償を命じました。
一方、被告によるプリントバックの生産・販売行為に不正競争防止法第2条第1号(ア)の商品主体の混同行為の規定を適用するためには、「標識の著名性」及び「混同の可能性」の要件を備えていなければなりませんが、プリントバックの場合は平面的にプリントされていて、ポリエステルの布素材であるためバーキン、ケリーとの混同を引き起こすとは断定し難く、(ア)を適用するには限界がありました。そのため裁判所は、被告の行為は2013年に不正競争行為に関する補充的一般条項として新設された第2条第1号(コ)の不正競争行為に当たると明らかにし、(コ)の適用範囲を他の知的財産権保護制度との関係において明確に説示しました。すなわち、裁判所は不正競争防止法第2条第1号(コ)が適用されるためには、1)保護の対象が権利者の「相当な投資や労力」によって作られた成果に該当しなければならず、2)侵害された権利者の利益が特許法、実用新案法、デザイン保護法、商標法、不正競争防止法、著作権法など知的財産権に関する諸法律及び全体の法体系に照らして「法律上保護する価値のある利益」に該当しなければならず、3)侵害者の行為が「公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法」に該当しなければならないことを明らかにしました。すなわち、保護の対象となる権利者の成果等が誰でも自由に利用することのできる「公共領域」に属するものではなく、「法律上保護する価値のある利益」に該当するが、法的保護の空白がある場合に該当するのであれば、不正競争防止法第2条第1号(コ)によって保護され得るということです。
一方、通常は金銭賠償により精神的損害に対する賠償までなされるとみるのが一般的ですが、本件で裁判所は、原告製品が「最高級の皮革」、「匠の精神」等に代表され、このような高級なイメージと名声を維持するために相当な広告費が支出されているが、被告のプリントバックは1820万ウォン程度で販売され、買い物袋やマザーズバッグ等としても使われている実態等を考慮し、財産上の損害1億ウォンとは別に、原告の名声・信用毀損による精神的損害5,000万ウォンも認めました。
上記事件において弊事務所は原告を代理し、本件を勝訴に導きました。
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