KIM&CHANG
Newsletter | November 2016, Issue 3
人事・労務
無期契約職に対する差別的処遇を禁止する判決
期間制勤労者、派遣勤労者の場合、「期間制及び短時間勤労者の保護に関する法律」、「派遣勤労者の保護等に関する法律」に正規職勤労者との「差別的処遇」を禁止する明示的な規定を置いています。これに対し正規職と同様に期間の定めのない勤労者でありながら、正規職勤労者と賃金等の勤労条件に差がある、いわゆる「無期契約職」等の場合は、このような勤労条件の差を違法なものとして規定する明示的な規定はありません。
ところが、ソウル南部地方法院第13民事部(勤労事件専担部)は2016610日、無期契約職や期間制、正規職等の雇用形態を勤労基準法(6条)が差別的処遇の禁止理由として定めた「社会的身分」として認め、無期契約職勤労者らが会社を相手取って申し立てた、一般職(正規職)勤労者にのみ支給される住宅手当、家族手当、食事代などの支給を求める賃金請求訴訟において、原告勝訴の判決を言い渡しました。
上記の判決事案の被告会社は所属勤労者を一般職、年俸職、業務職などに区分していましたが、上記訴訟の原告は、会社に期間制勤労者として入社し、契約を更新して業務職・年俸職に転換されたり、業務職として入社した勤労者などでした。業務職・年俸職は「期間の定めのない勤労契約」を締結し、雇用安定面では正規職の一般職と差がありませんでしたが、住宅手当、家族手当、食事代を受給できないなど、給与面で差がありました。
勤労基準法第6条は「使用者は勤労者に対し、国籍、信仰又は社会的身分を理由に勤労条件に対する差別的処遇をすることはできない」と規定していますが、上記の判決において裁判部は、業務職、年俸職は自らの意志や能力に関係なく、一般職のように補職の付与を受けることもできず、職級の昇進もできないため、業務職または年俸職という雇用形態ないし勤労形態が上記規定上の「社会的身分」に該当するとみました。そして、一般職勤労者と業務内容及び範囲、量などにおいて差がない業務職、年俸職勤労者にのみ、住宅手当、家族手当、食事代などを支給しないのは「合理的な理由」が認められないので、これに関する勤労契約の部分は勤労基準法第6条違反に該当し無効であり、したがって被告会社は、原告にこれに該当する賃金の差額を支給しなければなければならないと判断しました。
関連する大法院の判決がない状況で、上記の判決が今後の上級審で維持されるかを予想するのは今のところ難しいものの、事業場内の職種、職位、職級等の雇用形態ないし勤労形態による勤労条件の差も、合理的な理由がない場合、勤労基準法第6条に違反し得るのかに対する論争は拡大するとみられます。特に無期契約職、特定職などのように一般的な正規職勤労者と勤労条件上の差がある職群を活用している企業の場合、不合理な差別的処遇がないかを点検し、リスクがある場合には人事関連諸制度、規程、慣行などを改善する必要があります。
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