KIM&CHANG
Newsletter | November 2016, Issue 3
人事・労務
交渉代表労働組合の公正代表義務違反の意味及び効果に対する裁判所の具体的見解を確認した判決
これまで先例が少なく、実務上多くの論争があった労働組合及び労働関係調整法(「労働組合法」)上の公正代表義務の違反及びその効果について、ソウル中央地方法院労働事件専担部が最近、非常に意味のある判決を言い渡しました。
労働組合法では、一つの事業場に複数の労働組合が存在する場合、交渉代表労組に決定された労組にのみ団体交渉権と争議行為の主導権を認め、少数労組の参加権を制限していますが、これは効率的な交渉体系を構築し、すべての組合員の勤労条件の統一を図るためのものです。
ただし、このような交渉代表労働組合制度で少数労組の権利が制限されることを最小化するために、労働組合法ではいわゆる「公正代表義務」を規定しています。これにより、交渉代表労組の代表者は、交渉代表労働組合のみならず、交渉を要求したすべての労働組合または組合員のために使用者と交渉し、団体協約を締結する義務があります。また、交渉代表労働組合と使用者は、交渉窓口の単一化手続に参加した労働組合または組合員間で合理的な理由なしに差別してはならない義務があります。
このような公正代表義務に関して最近、全国金属労働組合は金属労働組合が少数労組の地位を有している事業場のうち8つの事業場の交渉代表労働組合を相手に公正代表義務違反を理由とした損害賠償請求を行い、そのうちの2事業場の使用者を相手取っては、公正代表義務に違反して締結された団体協約の無効確認を求める訴訟を申し立て、その第1審判決(2014ガ合60526)が2016721日に言い渡されました。
本件の判決で注目すべき点は、公正代表義務が実体的な義務、すなわち団体協約の結果において少数労組を差別しない義務と、手続的な義務、すなわち団体交渉及び団体協約の締結過程で少数労組を差別しない義務からなることを明示し、各公正代表義務の違反の有無を別途判断したという点です。
裁判所が公正代表義務違反に該当すると認めた事実と否定した事実に分けてみてみると、下記の通りです。
公正代表義務違反に該当すると認めた事実 公正代表義務違反に該当しないと認めた事実
団体協約上、労使協議、労使合意、審議・決定の主体を交渉代表労働組合に限定した場合
団体協約上、労働組合創立記念日を交渉代表労働組合の創立記念日に制限した場合
交渉代表労働組合が使用者との交渉会議録の公開及び少数労組との懇談会の開催要求を断った場合
少数労組の団体交渉要求案に対して交渉代表労働組合が何の応答もしなかった場合
交渉代表労働組合が最終団体交渉要求案を少数労組に全く共有せず、団体交渉の進行過程も全く知らせなかった場合
勤労時間の免除時間は交渉代表労働組合に70%配分されたが、交渉代表労働組合の組合員数が少数労組より11人多い場合
交渉過程を代表会の形を通じて共有しなかったとしても、交渉内容が記載された情報誌を少数労働組合員も閲覧できる公開された場所に備え置いた場合
暫定合意案に対する組合員の賛否投票を、交渉代表労働組合の規約に基づき交渉代表労働組合の所属組合員のみを相手に進めた場合
交渉代表労働組合が少数労組の組合員を交渉委員として参加させなかった場合
この他にも今回の判決を通じて、これまで公正代表義務を巡って実務上提起されてきた争点に対する裁判所の見解、すなわち、交渉代表労働組合が他の労働組合から団体交渉及び団体協約の締結権限の委任を受け、他人の事務として処理するのではなく、独自に自身の事務として使用者と団体交渉及び団体協約を締結するものだという点、したがって、交渉代表労働組合は団体交渉を締結するにあたって、少数労組の意見を取りまとめる義務があるだけで、自らの規約に基づいた賛否投票に少数労組の組合員を参加させたり少数労組の同意まで受ける必要はない点、また、たとえ公正代表義務違反が認められたとしても、それ自体で公正代表義務に違反して締結された団体協約が無効になるわけではない点を初めて確認することができました。上記判決は現在、控訴審が係属中であるため、今後の上級審の判決にも関心を傾ける必要があります。
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