KIM&CHANG
IP Newsletter/ MAY 2016
複数の公開行為に対する新規性喪失例外適用の判断
   特許法院は特許権者が行った1次公開及び特許権者の従業員が行った2次公開について特許権者が新規性喪失例外主張をしていれば、特許権者の従業員が行った2次公開に対しても新規性喪失例外主張が適用されることができると判断し、さらに1次、2次公開以後の3次公開については新規性喪失例外主張がなくても新規性喪失例外主張の効力が及ぶと判断した(特許法院2015.2.16.言渡し20145053判決)。
事実関係
   被告は特許第1355092号の特許権者であって、2013513日にユーチューブサイトに本件動画を掲示し(1次公開行為)、被告の従業員は勤務期間中に被告の指示により、2013915日に本件動画を掲示し(2次公開行為)、さらに被告は2013917にユーチューブサイトに掲示した本件動画を被告のホームページ(www.hlis.co.kr)にリンクさせた(3次公開行為)。被告は20131025日に本件特許発明を出願し、12次公開行為に対しては新規性喪失例外の趣旨を記載して証明書類を提出した。これに対し、原告は2次公開行為が発明者及び出願人ではないため新規性喪失例外主張は適用されず、3次公開行為に対しては新規性喪失例外の主張をしなかったため特許発明の進歩性判断のための先行技術とすることができると主張した。
法院の判断
   特許法第30条第1項第1号の公開例外主張規定が適用されるための公開行為は特許を受けることができる権利を有する者の意志による直接または、第三者を通した公開行為をいう。また、特許出願当時、同一の発明が何回か公開されている場合、出願人はそのうちの一番最初に公開された発明に対してのみ期間内に公開例外主張をしたとしても、ここにはその最初以降に公開された同じ発明に対しても公開例外主張をしようとする意志が当然含まれていると解釈するのが自然で、特許発明の公開においては、その性質上、ある時点の限定的行為ではなく、ある程度続く状態を予定しているものであるので、最初の時点で公開された発明に対してのみ公開例外主張をしても、その後に継続的に公開される同じ発明に対してまでその効力を及ぶようにする必要があるので、出願人が何度も公開された発明のうち、最初に公開された発明に対して公開例外主張をすればその残りの公開された発明に対しても新規性喪失の例外が適用されると解釈することが相当である。
   本件について詳察すると、2次公開行為は被告が従業員を通じて公開したもので、公開例外規定の効力が及ぶ適法な公開行為として見なければならない。また、被告が本件特許発明を出願して本件動画に対する1、2次公開行為に対して公開例外主張をしたので、これによってその後で成り立った3次公開行為によって公開された比較対象発明3に対しても新規性喪失の例外が適用されると見られるので、本件動画に含まれた比較対象発明3は本件特許発明の進歩性を否定するための先行技術とみなすことはできない。
コメント
   現行の審査指針書は、複数回の公開行為があり最初の公開行為に対してだけ公開例外主張をした場合、最初の公開行為が後続公開行為を当然予定しており、上記の複数回の公開が互いに密接不可分な関係にある場合(例えば、学会での論文発表と論文集配布などと同じ場合)にのみ、後続公開行為を先行技術として見ないと規定しているが、本判決は現行審査指針書よりは緩和された見解を示している。
   このような特許法院の見解は、出願段階では補正可能な期間及び登録設定料納付前まで新規性喪失例外の主張と証明ができるように特許法が改正されたのとバランスを取ったものと考えられる。すなわち、改正特許法によれば出願段階では拒絶理由などで自己発明の公開が問題になった場合、その段階で新規性喪失例外主張と証明をすることで新規性喪失が治癒される反面、登録後には治癒の方法がない問題点があった。本判決では、特許発明の公開においてはその性質上、ある時点の限定的行為ではなく、ある程度続く状態を予定していることと判示し、最初の公開に対して新規性喪失例外の主張をした場合には、その後の公開に対しては主張をしなくても最初の主張の適用を受けるとして特許権者に有利な判断をしており、特許権者の立場にさらに寄り添ったものと評価できる。
弁理士 許 湧
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