KIM&CHANG
Newsletter | September 2014, Issue3
人事・労務
通常賃金に関する大法院判決以降の裁判所の主な判断
昨年末、通常賃金に関する大法院(最高裁判所)判決が下されてから通常賃金及び信義則の抗弁の適用範囲に関する後続判決が続いています。その核心内容と意義を紹介します。
定期賞与金も支給日基準で在職者にだけ支給されれば、通常賃金に含まれない。
最近言い渡された下級審判決は、通常賃金に関する大法院判決の法理により「支給日基準で在職者にだけ支給する定期賞与金は、通常賃金に該当しない」と判示しています(大邱高等法院201451日言渡2011826判決など多数)。
これまで福利厚生的な手当てだけでなく、定期賞与金の場合にも「支給日に在職する者にだけ支給するという要件があれば、通常賃金の固定性が否定される」という支給日基準の在職者要件が適用されるかに関して多少議論がありました。ところが、最近の下級審判決によれば、定期賞与金も支給日に在職している者にだけ支給されれば固定性が否定され、通常賃金に該当しないという点が認められています。
団体協約などに規定がなくても、支給日基準で在職者にだけ支給する黙示の合意または労使慣行がある賃金は、通常賃金に含まれない。
大法院は最近、「支給日当時の在職者に限って賃金を支給するという制限が団体協約などに明文で規定されていないとしても、これに対する黙示の合意または労使慣行が成立して実際に支給日基準で在職者にだけ当該賃金を支給したならば、固定性が認められず通常賃金に該当しない」と判示しました(大法院2014612日言渡201239639判決)。
これは、通常賃金の固定性を否定する基準となる支給日基準の在職者要件が必ず明文で規定されていなければならない訳ではないということを確認したものです。したがって、今後何らかの賃金項目の通常賃金性を判断するためには、団体協約など明文の規定だけでなく、黙示の合意や労使慣行の成否も検討しなければなりません。
具体的な財務資料に基づかずとも信義則の抗弁が認められる。
最近大法院は、「(1)通常賃金が労使合意で定めた通常賃金の金額を大きく超える可能性及び(2)実質賃金の引上げ率が賃金交渉当時の賃金引上げ率を大きく超える可能性だけで、会社が予測できなかった新たな財政的負担を負うことになり重大な経営上の困難がもたらされるとみる余地がある」と判示しました(大法院2014529日言渡2012116871判決)。
上記のような判例は、当期純利益など会社の具体的な財務数値がなくても信義則の抗弁が認められる可能性を残しておいたという点で注目されています。
ただし、下級審判決の中には、具体的な財務数値を信義則の抗弁の認否に積極的に考慮している事例もあります。代表としては、使用者が追加で負担する金額が既存人件費の1~2%に過ぎず、通常賃金及び実質的な賃金追加引上げ率が高いという点を立証できるだけの具体的な証拠がないという理由で、裁判所は信義則の抗弁を排斥しました(ソウル中央地方法院2014529日言渡2012ガ合33469判決)。したがって、今のところは、信義則の抗弁に関して確定的に確立された基準があるとはいえないので、関連先例が蓄積されるまで判決の動向を引き続きモニタリングする必要があります。
定期賞与金以外の手当てに対しては、信義則の抗弁を適用することができない。
定期賞与金以外の手当てに対しても信義則の抗弁が適用され得るかどうかに対し、これまで大法院全員合議体(大法廷)判決の解釈上不明確な部分がありました。これに関連して、最近、ソウル南部地方法院(地方裁判所)は勤続手当、激励金を通常賃金に含めるどうかが争点になった事件において、「定期賞与金でない場合には、信義則の抗弁が適用されない」と判示しました(ソウル南部地方法院2014418日言渡2012ガ合230002013ガ合3805判決)。
ただし、信義則の抗弁の認否を賃金項目別に別様に適用しなければならない事由に対しては具体的な根拠を明らかにしておらず、今後このような見解が引き続き維持されるかに関しては、判決の動向を見守る必要があります。
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