KIM&CHANG
Newsletter | June 2014, Issue 2
知的財産権
従業員の著作権侵害に対し会社が使用者責任を負うとした判決
- コンピュータプログラムの一時的な保存に関する初の判決 -
ソウル中央地方法院(地方裁判所)が、会社が従業員の業務用として使用するプログラムに対する管理がきちんとできていない場合、従業員の著作権侵害に対し使用者責任を負うことになり得るという趣旨の判示をして注目されています(2014年2月21日言渡2013ガ合25649判決)。
この判決で問題となったプログラムである「オープンキャプチャー」(以下「本件プログラム」)は、ISDK社が無料で配布してきたコンピュータ画面キャプチャー用のプログラムです。ISDK社は、上記プログラムの新しいバージョンを発売し、非商業用・個人用の使用でない場合には使用料を支払うように政策を変更しました。新しいバージョンの配布以降、既に無料で配布されたバージョンを設置して使用していたユーザーが上記プログラムを実行すると「新しいバージョンにアップデートを始めます。確認」という通知ウィンドウが表示され、ユーザーが確認ボタンをクリックすると新しいバージョンのプログラムが設置され、設置が完了した後にはユーザーが新しい通知ウィンドウで「約款同意及び非商業用・個人用のみに使用します」という文言を選択し、確認ボタンをクリックして新しい使用権契約に同意してはじめて、プログラムを利用することができます。
ISDK社は、本件プログラムの有料切り替え後にも、従業員がこれを購買せず業務用として使用し続けてきた企業に著作権侵害を告知して損害賠償を求め、これに対し当該企業は本件訴訟を通じて職員の著作権侵害に関連する債務不存在確認を求めました。同訴訟で、ISDK社は著作権侵害に係る損害賠償を請求する反訴を提起しました。
裁判所は、本件プログラムのアップデートバージョンがコンピュータのハードディスクに設置されるときに発生する複製の場合は、既存のユーザーにアップデートを通知するウィンドウが表示されるようにして、ユーザーが「確認」ボタンをクリックするとアップデートプログラムが設置されるもので、有料になる前の既存の使用権契約の条件の下で上記の通知ウィンドウによる著作権者の許諾の下になされたものなので、複製権侵害ではないとしました。
しかし、上記のように設置された本件プログラムを実行するときに、プログラムの全部または一部が類型物であるRAMに一時的ではあるが電気的形態で固定されるものは、本件プログラムの実行過程で類型物であるRAMに固定され一時的な複製が行われるものと認められ、これは本件プログラムの新しい使用権契約にユーザーが同意した後に行われるものなので、著作権法が禁止する複製権の侵害であると判断しました。これにより、企業は職員の使用者として、ISDKが職員の著作権侵害により被った損害を賠償する責任があるとしました。
この判決は、米韓FTAの締結により改正され、2013年10月17日に施行された著作権法上の一時的な複製に関する初の判決という点で意味がありますが、第一審判決であり、また当事者がいずれも控訴したので、今後の推移を見守る必要があります。ただし、企業の立場としては、職員が個人的に設置して業務に使用するプログラムに対する著作権の管理をより徹底的に行う必要があります。
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