KIM&CHANG
IP Newsletter/MAY 2014
職務発明補償金訴訟、控訴審で調停決定確定
国際標準として採択された特許発明に対するサムスン電子と前職員の間の職務発明補償金に対する訴訟と関連して、2014年2月6日、ソウル高等法院は強制調停決定をし、これに両当事者が異議を申立てなかったことにより、上記の調停決定が確定した。60億ウォン台の史上最高補償金額が認められた第1審に続き、前職員は巨額の補償金を受けることになったと推定される。(具体的な金額は未公開。)
事実関係
原告はサムスン電子で、約4年間HDTV信号処理関連研究をしながらHDTV開発と密接な関連がある映像圧縮に関する源泉技術に関心を持ち、多数の映像圧縮機術を発明し、これらの技術は全てサムスン電子名義で出願及び登録された後、MPEG国際標準に採択された。原告は退社後、サムスン電子から職務発明補償金として2億2千万ウォンを支払われたが、サムスン電子が国際標準として採択された特許発明の実施料により、多くの収益をあげているという点を理由に挙げ、サムスン電子を相手取り正当な補償を要求する訴訟を起こした。
判決内容
一審のソウル中央地方法院は、2012年、サムスン電子に、職員にすでに支払った2億2千万ウォンの他に職務発明に対する正当な補償金として約60億ウォンの支払いを命じた(ソウル中央地方法院2012.11.23.言渡し2010ガ合41527判決)。本判決ではサムスン電子が国際標準として採択された職務発明により約600億ウォンの実施料の収益をあげていることを考慮して実施料収益の10%である約60億ウォンを職務発明に対する補償金として算定し、ⅰ)「前職員が2億 2千万ウォンの補償金を受領しながら追加請求権を放棄した」、ⅱ)「補償金請求権の消滅時効が成立した」というサムスン電子の主張は受け入れなかった。
両当事者共に、一審の判決を不服として控訴し、控訴審進行中、法院の強制調停決定に対し両当事者が2週間異議を提起しなかったことにより、調停決定が確定した。
コメント
本件で特に注目に値する部分は職務発明補償金額及び発明者補償率であるが、二審のソウル高等法院の調停決定でも、一審法院と同じく発明者補償率10%がそのまま認められ、調停決定では発明者の補償率算定理由は公開されなかったが、同じ発明者補償率を認めた一審では下記の事項などを考慮して標準特許に対する発明者補償率を決めていた。

▶本件特許発明がMPEG標準グループに属することによって得た実施料収入額が会社の利益額になった点
▶該当従業員が入社前に特許関連基盤技術に対する理論研究と実務経験が多かった点
▶該当従業員が創意的発想で本件特許発明を主導した点
▶会社自体が従業員の発明特許を国際標準特許として位置づけさせることでその価値を高めて大きな収益を上げようとした点

即ち、上記の事件での発明者補償率(10%)は、標準特許として認定された発明であるという点を含む上記のような様々な事情を考慮して認められたと見られ、結局、実施料収入が明らかになっている本件でこのような発明者の補償率の認定により巨額な職務発明補償金が決定したものと見られる点で、注目すべき判決である。今回の調停決定と関連して、最近、発明振興法及び施行令改正内容と共に法院の判決、決定傾向に対しても関心を寄せる必要があると見られ、この機会に、職務発明補償基準の設定及び制定∙改正手続き、補償金の支払い手続き等を含む確認が必要であると見られる。
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