KIM&CHANG
IP Newsletter/MAY 2014
訂正審判における「誤った記載を訂正する場合」の
判断について
誤った記載を正しい記載に訂正するために訂正審判を請求した場合に、明細書と図面全体の記載及び当該技術分野の技術常識等を総合的に考慮して、通常の技術者に自明であるかどうかによって、明らかに誤った記載を訂正する場合に該当するのかを判断すべきであると判示した(大法院2014.2.13.言渡し2012フ627判決)。
事実関係
審判請求人は訂正審判を通して、登録特許の請求項第3、5、9項及び詳細な説明の「全方向投射方式は世界座標界上のY-軸に平行な直線が補正後、映像面上にy"-軸に平行な直線と表示され、世界座標界上のX-Y平面上で同じ各距離を持つ二つの被写体は補正後、映像面上で同じx"-軸方向の間隔を持つ投射方式」という記載のうち「X-Y平面」は「X-Z平面」の誤った記載であるから、「X-Y平面」を「X-Z平面」に訂正することが許容されるべきであると主張した。これに対して訂正審判の審決では明細書で一貫して「X-Y平面」と記載している点などに照らして誤った記載に該当しないと判断した。しかし、審決取消訴訟では誤った記載の訂正であるため、訂正が許容されるべきであると判断したところ、特許庁長(特許庁)が大法院に上告した事案である。
判決内容
大法院は、「誤った記載を訂正する場合」とは、「明細書と図面全体の記載と当該技術分野の技術常識などに照らして、明らかに誤った記載を本来の正しい記載に正す場合」を意味するため、この法理により判断すべきであると判示した。具体的には、「X-Y平面」を「X-Z平面」に訂正する場合に、請求対象の全方向投射方式と関連して訂正前の特許発明の明細書では「X-Z平面」と記載された部分が見出だせないのは事実である。一方、特許発明が属する技術分野の技術常識に照らしてみるとき、通常の技術者ならば、訂正前の「世界座標界上のX-Y平面上で同じ各距離を持つ二つの被写体は補正後、画面上で同じx"-軸方向の間隔を持つ投射方式」は実施が不可能で、従って、上記の「X-Y平面」を「X-Z平面」に訂正してこそ特許発明の明細書及び図面全体の記載と符合して、発明の実施が可能になることが明らかであるため、このように特許発明の明細書と図面全体の記載、関連技術分野の常識などを総合してみるとき、本件訂正事項は誤った記載を正しい記載に訂正するケースに該当すると判断した。

さらに、誤った記載を訂正する場合が特許請求範囲を実質的に拡張したり変更してはならないという要件を充たすかどうかについて大法院は、特許請求範囲自体の形式的な記載だけでなく発明の詳細な説明を含む明細書と図面全体によって把握される特許請求範囲の実質的な内容を比べて判断すべきであると判示し、本件訂正事項は明細書と図面全体の記載及び技術常識などに照らしてみるとき、「X-Z平面」が正しい記載であることが明白で、誤った記載を明確に正しい記載に訂正することにより訂正前後でその発明の目的や効果は変わらず、発明の詳細な説明及び図面に記載されている内容をそのまま反映したものに過ぎず、第三者に予測できない損害を与える恐れがないため、特許請求範囲を実質的に拡張したり変更するケースに該当しないと判断した。
コメント
大法院は、誤った記載を訂正する場合は、明細書と図面全体の記載及び当該技術分野の技術常識などを総合的に考慮してその許容如何を判断すべきであると判示した。従って、誤った記載であることを理由に訂正する事案においては当該技術分野の通常の技術者の観点から、訂正前記載が明らかに誤ったもので、従って訂正後の正しい記載に直すことが明らかであるという点を客観的に主張することが重要だと言える。なお、誤った記載を訂正する場合でも請求範囲を実質的に拡張したり変更する場合には訂正が許容されないが、これに対し大法院はこれまでの大法院判決の論理に沿って一貫した見解を示している点も留意する必要がある。
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