KIM&CHANG
IP Newsletter/MAY 2014
薬事法改正案、立法予告
2007年に締結された韓米FTAによりアメリカのHatch-Waxman Actに相当する医薬品の許可及び特許の連係制度が韓国に導入されることになった。韓国で同制度を施行することにおいては国内産業保護のために2段階に分けて施行されることが協議されたが、これに先立って、特許権の存続期間中の市販のためにオリジナル医薬品の安全性及び有効性資料を根拠に医薬品許可を申請する者の身元を特許権者に通知するジェネリック申請者の通知制度は2012年3月15日からすでに施行中である。その後続の制度として、上記ジェネリック申請があった場合にジェネリック医薬品の市販を防止するための措置を設け、医薬品開発のモチベーションを高めるために、特許のチャレンジに成功した最初のジェネリック許可申請者には一定期間、第三者の市販を制限できる制度が2015年3月15日から施行される予定である。このたび、今後施行される市販防止及びジェネリック独占権に関する事項を規定する薬事法改正案が、2014年3月21日付で立法予告されたので、その主要骨子を紹介する。

なお、薬事法改正案の内容は市販防止及びジェネリック独占権に関する事項が主な内容だが、すでに施行中の特許登載及びジェネリック通知制度に関しても、一部変更事項を含んでいる。
1.特許登載申請公開及び第三者情報提供
今回の改正案で現在施行中の特許登載及びジェネリック通知制度において最も大きな変化をもたらす規定は、食品医薬品安全処(以下、食薬処)が特許登載申請事実を医薬品の名称、品目許可権者などの情報と共にウェブサイトに公開するというものである。このように特許登載申請が公開された時は、誰でも該当特許に関する事項が登載されてはならないとの情報を食薬処に提供できる。
2.ジェネリック通知
オリジナル医薬品の安全性及び有効性資料に基づいて品目許可を申請するジェネリック医薬品申請者は、品目許可申請日から7日以内に品目許可申請事実を品目許可権者及び特許権者に通知しなければならない。このように通知義務が付与される場合について、薬事法改正案では下記の場合を除き全て通知しなければならないと規定している。
(ⅰ)特許権存続期間が満了した後に販売するために品目許可を申請した場合
(ⅱ)品目許可権者及び特許権者がジェネリック通知を受けないことに同意した場合
(ⅲ)(ⅰ)及び(ⅱ)に準ずるものとして総理令で定める場合
3.ジェネリック通知の不履行時の措置
ジェネリック通知義務があるジェネリックが品目許可申請日から7日以内に通知しなかった場合、食薬処は期間を定めて通知することを命じ、それにもかかわらず通知義務を履行しない場合、食薬処が直接通知することができる。ジェネリック通知期間を遵守しなかった場合には優先販売品目許可(generic exclusivity)の可否を判断する時、実際の通知が成立した日を品目許可を申請した日とする不利益を被ることになる。
4. 販売制限申請(アメリカのOrange book systemでの「automaticstay」に相当)
品目許可権者はジェネリック通知を受けた日から45日以内にジェネリック医薬品の販売制限申請ができる。すなわち、アメリカのautomaticstayとは異なり、韓国では販売制限申請を積極的に行う必要がある。販売制限申請は特許権者がジェネリック通知を受けた医薬品を対象に特許目録に登載された特許と関連して、侵害訴訟、権利範囲確認審判、その他大統領令で定める審判/訴訟を提起、又は応訴した場合にのみ申請することができる。販売制限申請は当該ジェネリック医薬品に対しては1回のみに限定され、正当な理由なく該当登載医薬品に対するジェネリック医薬品のうち一部に対してのみ販売制限申請をすることは許容されない。販売制限申請期間(すなわち、ジェネリック通知された日から45日)中には、該当ジェネリック医薬品の販売が制限され、販売制限申請があった場合にはそれに対する食薬処の処分がある時まで該当ジェネリック医薬品の販売が制限される
5.販売制限申請に対する処分
品目許可権者がジェネリック医薬品の販売制限を申請すれば、食薬処は販売制限が申請されたジェネリック医薬品の販売によって品目許可権者/特許権者が受ける「重大な損害を予防する必要性」が認められる時、販売制限処分を下す。販売制限処分が下されれば、ジェネリック通知日から12ヶ月になる日まで特許が無効という審決や非侵害の判決が下されるなどの事情がない限り、ジェネリック医薬品の販売は制限される。
6. 優先販売品目許可(generic exclusivity)
特許チャレンジに成功したジェネリック申請者に与えられるジェネリック独占権を薬事法改正案では「優先販売品目許可」という用語で表現している。優先販売品目許可期間は韓国国内の業界事情などを考慮してジェネリック医薬品の販売が可能な日から12ヶ月に規定され、優先販売品目許可の付与要件として、ジェネリック申請者は、ⅰ)ジェネリック通知を行ったジェネリック申請者のうち最初にジェネリック品目許可申請をした者でなければならず、ⅱ)ジェネリック医薬品の品目許可申請前に審判又は訴訟を提起し、当該審判又は訴訟で勝訴した審決又は判決を当事者として受けなければならない。優先販売品目許可が付与される場合、優先販売品目許可医薬品と有効成分の種類及び含有量、剤形、用法/容量、効能/効果が同じ他のジェネリックの販売は制限される。
7. 合意内容の提出義務
特許権者とジェネリック医薬品申請者間の逆支払い合意(reverse payment agreement)等の潜在的公正取引法違反行為を防止するために、薬事法改正案は品目許可権者又は特許権者とジェネリック品目許可申請者間の該当医薬品に関連した審判/訴訟の終結又は優先販売品目許可の獲得に関する合意がある場合、合意内容を合意した日から15日以内に公正取引委員会及び食薬処の両者に提出しなければならない規定を設けている。
8. 医薬品許可特許審判委員会
許可特許連係制度の導入により、これに対し関連各種処分を食薬処が行うことになるため、このような食薬処の処分に対する不服を争う機関として、食薬処傘下機関に医薬品許可特許審判委員会が新設された。具体的に医薬品許可特許審判委員会は、ⅰ)医薬品許可特許連係に関する処分として違法、不当な処分(特許登載拒絶処分、販売制限申請拒絶処分、販売制限処分、優先販売品目許可申請拒絶処分など)を受けた場合に対する不服審判、ⅱ)特許登載に対する利害関係人の無効審判、ⅲ)優先販売品目許可処分に対する利害関係人の審判を行う。医薬品許可特許審判委員会に対する訴えは特許法院の専属管轄である。
9. 法令違反に対する制裁
登載申請時、虚偽書類を提出したり公正取引法に違反した場合、特許登載が取り消される。また、登載された特許権の存続期間が満了した後、販売するためにジェネリック品目許可を申請した者が該当期間満了前にジェネリック医薬品を販売したり、販売制限処分又は優先販売品目許可により販売が制限されるジェネリック医薬品を販売した場合、ジェネリック品目許可の取り消し又は業務停止の処分が下される。
10. 改正法の適用時期
特許登載に関する事項は、改正法施行後に初めに申請された登載申請から適用され、ジェネリック通知、販売制限及び優先販売品目許可は改正法施行後、最初にジェネリック品目許可を申請したものから適用され、合意内容の提出は改正法施行後に初めてあった合意から、医薬品許可特許審判委員会に関する事項は改正法施行後に初めて行われる医薬品許可特許連係に関する申請から適用される。

食薬処はグリーンリスト(アメリカのOrangebookに相当)に特許を登載する時、特許請求項をそのまま登載するのではなく、特許請求項を許可された医薬品に関連した事項の範囲で編集して「登載項」という用語で登載する。最近では「登載項」の代わりに「直接関連性情報」を使用し、特許請求項と共に登載している。このような食薬処の登載実務に対して許可特許連係制度が特許請求項の範囲で運用されるのか、そうでなければ登載項の範囲で運用されるのか意見が分かれており、ジェネリック通知範囲においては、食薬処が特許請求項の範囲で運用するということを明らかにしたところがある。今回の薬事法改正案を見ると、ジェネリック市販防止制度が「特許請求項」の範囲で運用されるかどうかは、依然として不確かだと見られる。
一方、薬事法改正案で販売制限処分の要件として「重大な損害を予防する必要性」を規定していることに注目する必要があると思われる。すなわち、これまでの食薬処の特許登載実務を考慮すると、食薬処は上記の重大な損害を予防する必要性要件を医薬品と特許の直接関連性に基づいて(すなわち、登載項の範囲で)判断する可能性があると思われる。

なお、今回の薬事法改正案に対する意見提出期限は2014年5月20日まで立法予告事項に対して意見書を作成して食薬処に提出することができる。
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